川上英幸のブログ

脚本家川上英幸がゆるゆると書き残すブログです
主に野球、相撲、競馬、読書、映画関係

死者の奢り・飼育


大江健三郎を初めて読んだのは25歳を過ぎてからでした
何でその時まで読まなかったか?特に理由はありません
ではどうしてその時読もうと思ったのか、今さら覚えておりません
とにかく手に取ったのがこの本でした
まず、表題作の一つである「死者の奢り」を読んで頭をぶん殴られました
ガツンときました、本当に
これが大学在中に書かれた文章だと!?
私が生まれる10年前にかかれたものだと!?
そして「飼育」を読んで文学性の中におけるエンターティメントも備えているのだなと言うことを感じ背筋が寒くなりました
「死者の奢り」が発表されてから5か月後の「飼育」で、すでにこの作家は完成されている
こういう人もいるのだなと痛感させられました
その後何年かして、フリーになった私は脚本だけでは食えず焼肉屋で深夜の厨房のバイトをしていました
そんな時、大江健三郎氏はノーベル文学賞を取りました
「しかし、ノーベル賞ったって、日本人の何人が大江健三郎なんて読んでいるんだよ」
年長のフロアのバイトが仕事終わりにそう漏らしたことを今でも覚えています
安部公房が取れなかったノーベル文学賞
現代作品では日本人がまだ取れなかったノーベル文学賞
そうか、大江さんがとったんだ
なんとなく、ジンときた瞬間でした

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