石原藤夫氏のSF小説は科学的根拠もたっぷりで、今でも時代を超えて読めるものが多いのだが、残念ながら、そのほとんどが絶版になっている。
有名なのは惑星シリーズだが、ここでは6作の短編を収録した「画像文明」から一つをピックアップして紹介する。
<以下ネタバレ注意>
トム・ゴドウィンの不朽の名作に「冷たい方程式」という短編小説がある。これは宇宙を航行する貨物船で、密航した少女が見つかるところから始まる。少女は遠い星にいる兄に会いたいがため密航したのだった。しかし、大変な問題が発生してしまう。貨物船の燃料は行き先にたどり着くためには少女一人運ぶ燃料が足りていなかった。そして操縦士は苦渋の判断を強いられる。
トム・ゴドウィンという作家は他にも作品を発表していたそうだが、私が読んだのはこの作品ただ一つだけ、しかし、これは強烈なインパクトを持った作品であった
その証に、この作品に対しては日本のSF作家たちも様々なパロディを生み出し、何とかこの問題を解決しようと頭を捻った
この本に収録されている「解けない方程式」もその一つで「冷たい方程式」が悲しい決着を遂げるのとは対照的に見事な方法で困難を乗り越えている。こういう方法を捻りだせるところがSF作家としても力の見せ方であろう。
変わったところでは筒井康隆の「たぬきの方程式」というのもあり、これは無重力状態にして仮死状態となり(眠り)燃料を節約するという方法だったが、その後には残酷な末路が待っている(笑)
ともあれ、この「解けない方程式」はタイトルと反比例して見事に問題を解決した非常に記憶に残る短編となっている