川上英幸のブログ

脚本家川上英幸がゆるゆると書き残すブログです
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冷血


タイトルからトルーマン・カポーティの同作品を思い浮かべます
ただ、カポーティの冷血はクラタ―一家殺害事件と言う実際にあった事件を描いたノンフィクションノベルであったのに対し、これはあくまでフィクションの小説です
同じような事件があってそれをモチーフにしたのかどうかもわかりませんがあくまで小説です
しかし、これがあまりにもドキュメンタリーチックで見事に仕上がっており感服させられます
犯人2人が16号線の国道でコンビニ荒らしをやり続けるところなど非常にリアルに描かれています
そして、何よりも行きずりで行った殺人と言うのは、恨みがないため反省の心が持てないというところ
これは実にリアリティを感じさせます
光市の母子殺人事件の犯人や、大阪池田小学校で8人の児童を殺傷した男などがまさにこれにあたるといっていいでしょう
こういう殺人者に真摯な反省を求めることなど不可能に近いということがわかります
なお、作者の高村薫氏は出版形態が変わると大幅に書き直す作者として有名で、このハードカバーは2012年初版ですが、3年たった今、文庫化されていると思われますが大幅に書き直されている可能性が高いです。未読の方は作者が最初に書いた本作も是非ともお読みになることをお勧めします

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