川上英幸のブログ

脚本家川上英幸がゆるゆると書き残すブログです
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終わりなき戦い

最強の訓練と教育を受けた兵士たちが謎の異星人トーランと果てることのない戦いを繰り広げるという作品
福本直美氏(本書の解説は素晴らしいと思う)の解説によると、本書を書きあげる上で、作者はハインラインの「宇宙の戦士」を参考にしたとのこと
「宇宙の戦士」と言えば、あのガンダムのモビルスーツの参考にもなった作品で戦争を賛美した書籍として有名である
しかし、この小説ではまずを持って、そのトーランなるものが一体何なのかわからない。読者に情報を降ろさない、そのことによっていつまでも戦いつづけることの空虚さがじわじわとしみだしてくる
解説では作者ホールドマンがベトナム戦争に参加していたことに触れ、この戦争は兵役にとられたものにとって人工の憎悪を持ってしか戦えぬものだったと記している
人工の憎悪、なかなか言い得て妙
世界各地で紛争に介入する兵士たちも皆人工の憎悪を持って戦うしか術はない
結局は本質を持って憎しみ合う者たちの間に入り、国際社会に溶け込もうとする側の味方をするだけなのだから
そんなさまを作者は描くことで、ハインラインの「宇宙の戦士」とは対極の作品として仕上げたのである
絶版になってないよね、多分

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