川上英幸のブログ

脚本家川上英幸がゆるゆると書き残すブログです
主に野球、相撲、競馬、読書、映画関係

砂上の影

著者の久野四郎氏は昭和7年生まれ成蹊大学卒としかわかりません
この本にはあとがきも解説もなく、また久野氏もこれ以外には全く違うジャンルの書籍を一冊刊行しているだけで、正直謎の作家であります
この本には表題作を含む17本の短編が掲載されています
その中の一編、私が特に気に入ったものをご紹介します
ある男が不思議な女と出会います
男が女と逢瀬を重ねるたびに男は世界が血みどろになるような悪夢に襲われます
やがて、男はある人から中国に伝わる女の魔物に憑りつかれていることを指摘されます
その魔物をどうすればいいか
男は一枚の奇妙な動物の描かれた絵を差し出されます
それは獏の絵
この絵を枕の下に敷き、「獏喰らえ」と七回唱えるといいというのです
なぜ七回かというと、一回目で獏が呼び出され、二回目で悪夢を捕まえ、三回目で殺し、四回目でひきさく、五回目で食べ始め、六回目でほとんど平らげ、七回目で食べ終わる
しかし酔って帰った男はその絵を枕の下へと入れると、獏喰らえを4回唱えた時点で眠りに落ちてしまいます
すると翌日驚くべきことが……
「獏喰らえ」という16Pの短い短編
これ一つだけでも価値のある一冊です

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